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世相

2019年 秋

  • 2019年10月

 

 

世相日本世界感じるままに           榎本機工㈱ 社長 榎本良夫

            

ホームページ掲載継続のご案内

金属産業新聞の年2回の掲載を終了いたしました。

しかしながら、弊社ウエブサイトから本稿をご覧いただいている方々から継続のご要望があり、引き続き年1回から2回の不規則掲載になりますが、執筆掲載を継続する事に致しました。今後とも御批評ご意見賜れば幸甚です。社長榎本

 

「老人、運転免許返納、点字ブロック、必要は発明の母、発明は必要の母」

自家用車の高齢ドライバー運転による痛ましい交通事故が多発している。適当な年齢で運転免許証を返納すべきだという論議は、訴える被害者遺族からしてももっともな事かも知れない。しかしながら高齢化社会を迎えた日本で、今後老人の移動手段としての自動車がますます重要になるのは目に見えている。特に公共交通機関の無い辺鄙な過疎地では他に移動手段が無くなりつつある。技術者としては、老人が運転しても決して事故を起こさない自動車を開発するのが本筋だと思う。自動運転システムがその大きなかぎを握っている。そもそも自動運転システムになれば本当の自動車になり、当事者が運転するという事にはならなくなる。痛ましい事故は新技術を以てすれば防いで行く事ができるはずだ。決して後ろ向きにならないことだ。

キャリーバッグを引いていて邪魔な点字ブロックもいずれは無くなるだろう。センサーを埋め込めば済むはずだ。もっと進めばGPSナビゲーションシステムで目の不自由な人がどこでも危険無く歩いて行ける様になるのもいずれ時間の問題だと思う。

必要は発明の母だ。しかしカシオの兄弟が言った「発明は必要の母」という様な発明をぜひしたい物だ。過去に存在しなかった新しい需要をその発明により創成するという事である。

 

「ワインコルク栓」

コルク樫の木が増えない割に、ワインの生産消費が増え、安価なワインでは栓にプラスチックを使う物がある。ところが驚いた。飲み残しに栓をし、冷蔵庫で横に保管すると、コルク(では無く樹脂だが)抜きを差し込んだ穴からワインが漏れてくるのだ。沢山の人造品は時に天然物を凌駕する事があるが、ワインのコルクはまだダメだ。

 

「とんでも中国、クローン犬」

中国のクローン犬の報道がされていた。細胞、遺伝子工学、中国では、タブーとされるか倫理面で禁じられている研究が恐らく多数されているはずだ。この様な研究は中国が得意とするところだ。クローン人間達による軍隊とか、何か空恐ろしい研究もされているのではないかと想像するが、多分していると思う。

 

 

「丸山議員、塚田議員」

北方領土訪問時に起こした丸山議員の行動は海外から「また日本は昔と同じになった」と思わせるに十分に足る行動と発言だった。また戦争を起こそうかという国会議員が居るという事実を世界に知らしめるに足る行動だった。

そもそも日本は歴史教育に不備がある。どうして先の大戦に踏み込んでしまったのかという大事な教育が十分にされていない。歴史教育は古い方から始めるので昭和史の一番大事なところが時間切れで講義されない事が多い。歴史教育は遡る形でやった方が良い。

折角平和憲法を持ち、世界でただ一つの核被爆国。戦争は二度としてはいけないと強く発信しているにもかかわらず、こんな国会議員が出てくる国である。歴史教育の手法の見直しが必要だ。

ドイツの歴史教育がどうなっているのかつぶさに調べているわけではないが、2度の世界大戦を引き起こした張本人の国として不戦教育は歴史教育と共に十分にされていると聞いている。手法として見習う必要が有るかと思う。

もしかして、本州と九州を結ぶもう一つの橋の建設はうまく行ったのかもしれないが、塚田議員の忖度発言でご破算になってしまった。地元の人の落胆と怒りの程を思わずには居られない。なんとはた迷惑だったことか。橋は当分出来ないだろう。変な国会議員が増えている。

 

「歴史の勉強は逆から」

歴史は遡る形で勉強するのが良いとコメントしたが、実際にで「日本史は逆から学べ」という文庫本が出ていた。趣旨は私と同じ、とても読みやすく日本史が書かれている。河合敦著 光文社刊。学校の歴史教育は是非この方式に変えて欲しいものだ。

 

 

「悠久の時間が流れる中国ではなかったか」

世界4大文明発祥の地、中国。とうとうと流れる大河長江の様に、中国は大きくゆっくりと時間が経過する国と思っていたが、どうも最近事が拙速過ぎる様に思える。香港のコントロール(つまり中国の意図する徐々に中国にしてしまう)は100年とかのスパンでやるべきだったろうが、急いでやりすぎた為に反感を招き収拾がつかなくなってきた。台湾はこれを見て次はこちらにと、一国二制度に批判的な動きが加速している。まさにやぶ蛇だ。

一帯一路政策もあまりに急ぎすぎかえって他国の反感と警戒を招いてしまっている。

 

「リセッションインド」

登り一本だったインドがここにきて景気減速している。自動車の生産も3割以上ダウンしている。2020年4月から自動車の排ガス規制がヨーロッパと同じにするという政府決定、同時に乗用車にディーゼルエンジンを搭載する事が禁止になるという事で、自動車の買い控えが発生しているのが一因らしい。ディーゼルエンジン関係の部品メーカーは急な受注減で今後の対策に右往左往している。
5年ごとの景気のアップ&ダウンというデーターもあり、インドの多くの人はインドの景気はダウン期に入っていると見ている。
2020年には回復するという楽観的な見方がある。そうであって欲しい。買い控えは必ずリバンドを生むので再度火がつけばまた忙しくなるだろう。
インドの2輪産業は面白い展開をしている。一般的に4輪が増えてくると自然に2輪が減るのだが、インドの2輪は輸出産業に転換しつつあり、生産の減少が少なく見られる。アフリカやアラビア諸国、南米などに積極的に輸出している。アフリカのシェアは7割近いらしいが、中国製を駆逐しているのだろう。それはそうだ。インドの2輪は日本の技術。悪いわけが無い。喧嘩別れしたヒーローホンダ社のインド側は現在ヒーロー社だが、合弁中にしっかりホンダの技術を習得しているはずだ。ホンダも2輪の世界戦略につまづきがあったに違いない。


1.HeroHonda, Hero, Honda
(この写真は、偶然にも合弁時のHeroHondaブランドと喧嘩別れしたあとのHeroブランド、Hondaブランドのオートバイが仲良く撮影できたもの)

 

「赤とピンクに囲まれるインド」

インドの周辺国が赤やピンクに染まりつつある事に対しインドは危機感を強めている。インド北部のカシミール地方では実際に中国との国境があり紛争の火種でもある。中国の一帯一路政策による融資に対する債務返済困難の理由からスリランカのハンバントータ港は中国が租借しその管理下になった。パキスタンのグワダール港も似た様な経緯をたどっている。ネパールはかなり以前から中国の影響強く受けている。バングラディシュも同様で、周囲が赤くなってきているインドはどうしても政治的に日米豪とのタッグを組む必要が出ているのである。勿論それは商売の上でも強い絆となり得る。

 

「動かないロシア経済」

ロシア最大の自動車メーカーアフトバズは、Ladaという名前の車を筆頭に、ロシア国内でのシェアはまだ20%近く持っている。しかしながらじり貧だ。ルノーが資本参加し、中国の第一汽車とフォルクスワーゲンの様な関係と結果になるのかと思っていた。紅旗という国産車を製造していた第一汽車はフォルクスワーゲンの技術を導入しサンタナの製造に移行し技術レベルを上げた。それに連れて部品のサプライヤーも技術を伸ばして行き企業数も増えた。一時第一汽車製のサンタナは中国の自動車市場を凌駕したものだ。これを模して、現在中国国内を走る自動車の多くは中国製の外国ブランド車である。ロシアで走る自動車も同じ外国ブランドである。しかしながらロシアでは部品のサプライヤーが一向に育たない。ロシアで製造されている外国ブランドの車の多くは部品を輸入するノックダウン生産なのである。ロシア政府が中小の部品サプライヤーの育成に本腰を入れない事と、社会主義体制の悪い規制が問題の主因の様だ。過去アフトバズも含め社会主義体制が故に自動車会社は製造の川上から川下まで一切を一社で囲い込んでいたので、部品サプライヤーが一切育たなかった。社内囲い込みなので競争原理が無く、生産設備も技術も古いままなのである。ロシアは天然資源一辺倒の輸出体制から脱却し、産業構造を変えるというのだが、産業構造は一向に変わらないのである。

 

 

「悠久の大河ボルガ川」

とは言ってもロシアにはそこそこ出張をしている。今年9月にはそのアフトバズのあるサマラの展示会に出展した。

 

2.SAMARA展示会

もう4度目である。

サマラはボルガ川の港町である。ここから川伝いに船でモスクワにも行くことも出来る。流れ着く先はカスピ海だ。全長3700キロ余り。サマラの港の近くの河岸には昔、船を河岸から人力で引っ張ったモニュメントの像があった。「エイホーラー」と掛け声をかけながらロープで船を上流に引っ張ったのであろう。川は冬凍結して歩いて渡る事が出来る。想像もつかない。ずーっと昔から温暖なヨーロッパから人々は夏の暑い時期にこちらに移動してきたのだろう。時に零下50度にもなる極寒でほとんどが死に絶えたはずだ。夏の間しっかり蓄えと積み、冬を越える事が出来た人達が少しづつ東に移動して行ったのであろう。

ロシアの自動車産業がどうのこうのと書き綴ったが、ボルガ川のその大きな景色を見ているとその悠久の流れの前には些事にも値するのかとふと思った。

3. ボルガ川

 

 

「ブラジル、ボルソナロ大統領」

良くも悪くも言われるボルソナロ新大統領なのであるが、ブラジルが変わりつつあるという実感は実際にある。

南米域内の関税や非関税障壁の撤廃を目指しているメルコスールは、ブラジル、アルゼンチン、ウルグアイ、パラグアイ、ボリビア、ベネズエラ(加盟資格停止)6ヶ国と、ペルーやチリなど準加盟国6ヶ国から構成されている。ヨーロッパ主要国とこのメルコスールがEPA、経済連携協定を締結する動きがあるという事だ。悪名高いブラジルの輸入関税もいよいよ見直しに入っていると見られる。ビザにしても日本人はビザなしで観光目的の入国が出来る様になった。ブラジルの中小企業主と話しをしても過去の雰囲気が変わって来た感じがするのである。

 

 「展示会ビジネスも流れが変わってきた」

展示会は新規顧客の囲い込みに有効な手段であった。多少費用はかかっても「来ていただける」というメリットは大きい。例えば広いインドや中国では点在する、自社に可能性のある顧客層をしらみつぶしに訪問するより、展示会は手っ取り早い手段ではあった。しかし最近何カ国かの展示会では新しい引き合い先の出現がほとんど無くなってしまった。いつも来ていただけるのはなじみの仲良し仲間だけ。展示会の入場者数も頭打ちか減少だ。掘り尽くしてしまったのだろうか。技術が革新的に変わらないので、行っても仕方が無いか、と思う人もいるだろうし、昨今ではホームページで欲しい情報が手に入るので、その影響も強いと思っている。小さな小間でも数百万円かかる展示会も見直しの時期にきているのかも知れない。

 

「ちゃぶ台返し」

批判を浴びるかも知れないので書くのをためらう日韓関係であるが、政権が変わると過去の約束事が反故にされるちゃぶ台返しをされるのであれば、信用に足りないとしても仕方がないだろう。

 

「好調日本」

日本の景気動向は依然として悪く無く、2020年の東京オリンピック終了まではこのまま行って欲しい。米中の貿易戦争の余波で円高基調であるのが多少気にかかるところだが、欲を言えばこれが2025年の大阪万博までこれが続いてくれればと淡い期待もしている。

大学卒の就職戦線はルールがすでに消滅してきた様である。学生は卒業のぎりぎりまで粘って遠慮なく行きたいところに行く。内定も糞も無い。高等学校は学校で少なからずモラルに沿ったコントロールはしているが、今後どうなるかは判らない。

最低賃金は上がる一方だが、コンビニや飲食業ではパートやアルバイトが集まらないらしい。今年から有給休暇は最低でも年5日取得する事が義務づけられた。景気が良い時はそれも良いかもしれないが、お隣の韓国では労働者優遇が完全に裏目に出てしまっている。中小の会社は労働者優遇で事業が立ちゆかなくなり、廃業が増え、労働市場が縮小してしまった。日本も注意しておくべきであろう。バランスが必要だ。

 

「インダストリー業界での生き残り」

自動車部品産業であれ、弊社の様な機械装置産業であれ、工業界でどうやれば生き残って行けるのかという設問に対して、私は新しい物への取り組みしか無いと思っている。あらゆる企業が生き残って行く為には、「注文を欠かさない事」が必須である。その為には常に新しい物へのチャレンジが必要になる。物が陳腐化するのは速い。事がすべからく変化して行くのに、ただ同じでは取り残されていずれ淘汰される。マネージメントや人材育成も勿論必要なのであるが、優先順位第一はどうしても「新しい物への取り組み」でしかない。

2019年、暑い夏が終わり秋を迎えています。お読みいただいている方々のますますのご健勝とご発展を祈念します。健闘をお祈りします。

2019年・秋

 

 

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