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世相

平成31年 正月

  • 2019年01月

 

 

世相日本世界感じるままに           榎本機工㈱ 社長 榎本良夫

            

「インド、高速振動道路」

インドの首都デリーの南西に位置するグルガオン(最近名称がグルグラムと変わった)はデリーの衛星都市の一つである。一時多数の工場がここに出来たが、現在ではオフィス街、住宅街になってしまった。私がインドに行き始めた1997年頃はただの荒野であり、豚や山羊が走り回っていたものだ。現在工場群はさらに南西に移転し、隣のラジャスタン州にちょっと入ったニムラナには日本の工業団地もある。

デリーの南のファリダバードでは新しい工業団地がどんどん規模を拡大している。東にはやはり広大な工業団地を有するノイダがある。地盤のしっかりした広大な原野か農地であるので、インフラさえ整えれば広大な工業団地の造成が可能なのである。

南西部の工業団地地帯から、ファリダバード、ノイダを結ぶ高速道路がほぼできあがりつつある。交通渋滞の激しいグルガオンやデリーのバイパスとしての目論見である。昨年暮れ、商談の為デリーをはさんで西から東へ移動する際にこのバイパス高速を利用した。

 

Delhiの高速道路

 

片側3車線、ほぼ一直線のコンクリト道路は、まだ新らしい為行き交う車もほとんど無く、快適に移動出来るはずであったのであるが、そうではなかったのである。高速になるにつれ、車の上下動がひどいのである。高速道路を高速で走行するという概念はあるはずだが、技術が伴わないのである。路面の平坦度が悪い。低速であれば気にならない程度であるが、速度を速めると一挙にひどい上下動に変わるのである。数日前の開通式にモディー首相も通ったということだが、感想はどうだったのだろうか? 高速プラス振動道路。技術レベルがまだまだ低いのである。

 

「中国ビールコップ、乾杯」

中国に頻繁に行かれている人であれば判るだろう。ビールのコップが小さすぎて注ぎ足すのが誠に面倒くさい。ドイツの様な、でかいジョッキが無い。明らかにお酒の飲み方の習慣の違いだ。中国では乾杯は文字通り杯を乾さなければならない。ビールも同じ。だからコップが小さい。

 

「中国自動車規制、ナンバープレート番号で曜日が違う」

モータリゼーションが一気に押し寄せている中国。ちょっとした地方都市でも交通渋滞はひどく、自動車のナンバープレートの奇数と偶数などで市内を走れる曜日を規制したりしている。自動車会社の陰謀もあるのかなとも思った。私がちょっとした中間層であれば、車を2台持って使い分けるだろう。そうでないと業務支障だ。自動車メーカーは沢山売れて潤う。

 

「中国のホテルも老人スタッフ」

最近中国の出張の際、日本の東横インクラスのホテルに宿泊する事が多くなった。ホリデイインの廉価クラスである。冷蔵庫が無いのがちょっと困る場合があるが、商用で夜寝るだけであれば十分である。中国が故部屋のスペースは狭くない。決して悪くはない。

最近、「中国もだな」とふと気づいた事があった。朝の簡単な朝食。スタッフはおじいさんとおばあちゃんだけなのである。全部が全部では無いがだんだんその様になって行くのであろう。

 

「韓国蔚山 ロボット学校」

蔚山(ウルサン)、現代グループの拠点でもある有数な工業地帯だ。懇意にしている韓国在住の日本の方と、蔚山に住む資産家を訪問する事があった。何でも発電所建設などによる立ち退きの都度資産が膨れてしまったらしい。現在は不動産業をしている。この韓国の資産家が息子への資産譲渡として何か会社を創設したいのだという相談がその日本人にあったらしい。私に何か良いアイデアでもないかとの相談。自動車部品などどうかというが、すでに多数の自動車部品サプライヤーが林立している韓国で、いくら弊社が部品産業に関係しているからと言ってお手伝いするすべはもちろんない。ふと最近の工業界での自動化が頭をよぎった。いままで人手に頼っていた工場が現在どんどんと自動化されており、実際に自動化に改造するエンジニアリング会社は多忙を極めている。韓国も当然その傾向にあり、まだまだエンジニアリング会社は参入出来る余地がある。CNCロボットを使っての自動化のエンジニアリングであれば、ハードの部分のハードルはさほど高く無い。その様に提案したら、「ロボットなど使える人材がいない」という返事。「それなら若いエンジニアを養成したら良い。どこからか老齢のエンジニアを先生として一人招聘し、若い人を育てる学校の様な物を作ったらどうか」そのあとこの韓国在住歴の長い日本人から面白い返答が来た。「韓国では人(他人)の為にわざわざ学校を作る様な人は居ない」と。

 

「ガラパゴス、日本、寺子屋」

一世代前の数字ボタンのある携帯電話を「ガラケー」を若い人たちは呼ぶが、「ガラパゴス携帯電話」の略称である。(ちなみに新年の、明けましておめでとうは、「アケオメ」とか)

なぜガラパゴス携帯と言うのか意味が判らない若い人たちが居るのは面白く思った。そもそもガラパゴスが南米エクアドル沖にある太平洋上の孤島である事を知らない。長い間大陸から孤絶した孤島に独特の進化を遂げたトカゲの一種、イグアナが居る。これをダーウィンが見て種の進化論を着想した。孤絶した場所では長い間他の種との交流が無く、独自の進化を遂げる。他方大陸などで多数の種の交流がある場合では、それぞれが入り混じって生き残りが出来る種が進化して生き残る。どちらかと言うと混じり合った方が優秀な?種となる。ガラパゴス携帯電話とは、技術が孤絶した日本で生き残っている旧態依然とした(古い)携帯電話であるという卑下した総称である。

ガラパゴス日本と、しばしば言われるが、そうだろうか? 確かに日本はヨーロッパから見て極東(中東、遠東そしてさらに東の先)の孤島、ガラパゴス諸島に相当するかも知れない。事、徳川260年の治世では鎖国しており文化の交流を拒んできたから独特の(ガラパゴス?)文化を育んできた。しかし、モラリティや教育の高さ、文化の面では西欧諸国の上を行く部分も多い。行政の多くを民間にアウトソースした事情から、特に庶民の教育レベルは非常に高く、寺子屋などの教育施設が国の隅々まで完備していたのは恐らく日本だけだろう。これがガラパゴス日本であった。太平の眠りを覚ましたアメリカの蒸気船に彼我の技術の差を思い知った日本は開国し、西欧技術そして文化を積極的に導入したのであるが、庶民の教育レベルが高かったので一挙に身になって行き、あっという間に西欧諸国に伍して行ったのである。ガラパゴスも中身次第だと言うことだ。今でも日本にはガラパゴスがいっぱいあるのかも知れないが、決して悲観する必要はない。いつか化ける可能性がある。中身を良く見極める必要はある。

 

「体操協会、仕事の鬼となれ」

富山に、地元では有名なホンダ系の部品メーカーがある。YKKの様にカリスマ的創業者が会社を大きくして今に至っている。その創業者がまだ存命の頃、およそ30年前、会社のここそこに創業者の企業方針が掲示されていた。「仕事の鬼となれ」である。ところが最近久しぶりにこの会社を訪問したところ、このスローガンはもう無くなって、「社員の幸せをなんとか、、、」というスローガンに変わっていた。最近はちょっとした言動がパワハラと感じたと訴えられてしまう。「オリンピックに出られなくなっちゃうわよ」なんてのもパワハラの範疇に入るらしい。多少の特訓も必須なスポーツ界も大変な事だ。「仕事の鬼となれ」これも立派なパワハラなんだろう。

 

「点字ブロック」

点字ブロックには2種類ある。線が3つ入った「誘導型」ぽちぽちの突起が出た「警告型」である。以前コンクリートブロックの金型の製作にちょっとかかわった事があり良く知っている。目の見えない人を誘導し、立ち止まるべき所で警告するのである。いつからこんなに沢山の点字ブロックや貼り付けシートが増えたのか判らないが、キャリーバッグや重いスーツケースを転がしていると引っかかって転倒しそうになり難儀する。しかし目の不自由な人の為と思うと我慢するしかないかと諦めるのである。

ところがある雑誌記事に面白い事が書かれてあったものだ。ある視覚障害の人が「点字ブロックがあると歩きづらくありませんか」と言うのである。「でもあれが無いと困るのではないのですか」という反論に対し「キャリーバッグを引いているとあんなに歩きづらい物はありませんよ」と言うのである。でこぼこにせずに誘導できる方法が無いのか、、、これが建設会社の開発のテーマとなる。そして思い込みはしてはいけないという事になる。

 

 

「Fがある大韓航空機」

ほとんどのエアーラインには、短距離と中距離にはファーストクラスの設定が無い。いいとこビジネスクラスである。航空会社としてメリットが無いのが理由のはずだ。長距離路線でもファーストの設定が無いルートも沢山ある。ところが大韓航空には近距離であってもほぼ設定があるのである。事情があるのだろうが、面白く思った。

 

「大韓航空航空路」

昨年ヨーロッパから帰国する際、韓国の商用をセットした為に大韓航空機で仁川に到着する便に搭乗した。CAの多くは日本語が話せ、日本人と判ると必死で日本語を使う様努力する。搭乗直後には、私を韓国人と勘違いする事がほとんどで、韓国語で話しかけてくるが、言っている事は大体判るので、私も「イエー、イエー」と適当に返答するのだが、その後搭乗者名簿を見て日本人と判ると飛んできて、失礼しました、とわざわざ日本語で謝りに来るのである。最初から、「イルボン サラム(日本人)」と言えば良いのだが、私も人が悪い! 皆それぞれで日本語は勉強しているのだろう。日本の航空会社も見習うべきかも知れない。

仁川着陸前、当然北朝鮮上空は飛行できないので、天津の上空あたりから遼東半島、山東半島を避けてジグザク航路を取る。

大韓機の航路

 

一直線に仁川に向かえば効率が良いのに、国際情勢でこんなことになっているのであろうが、ちょっと気の毒に思った。

 

「生産効率の悪さは丁寧さのせい?」

日本の工場は生産効率が悪いと指摘される。ドイツなんか夏休みは1ヶ月、効率が高いからだとする人たちが多い。そうかも知れない。

今年から有給休暇の最低5日取得が法律で義務づけられ、罰金刑が処せられる。残業時間の上限も厳しくなる。そして給与のアップが求められる。戦後最長となりそうな好景気で、中小企業経営者は泣きっ面に蜂といったところだ。しかしながら効率は極力高めて休みは沢山取るについては異論ない。

ところで、生産効率が悪いという部分、それはもしかしたら仕事を丁寧に仕上げているからなのではないかという側面はないだろうか?

 

「フェイクニュース、戦争時の新聞」

最近多いフェイクニュース、虚偽報道である。何もびっくりする事は無い。先の戦争の時、日本のすべての新聞の記事はフェイクニュースだらけだった。言論統制の中、嘘の大本営発表には逆らう事は出来なかったという事情はあるのであるが、広く国民に虚偽報道を繰り返していたという日本の報道機関の暗い過去は消すことは出来ない。

 

今年の動向は、どうやら海外の動向に強く影響されるのではないかと想像する。ヨーロッパはドイツもイギリスもそしてフランスも調子が悪い。アメリカと中国の喧嘩は、そもそもアメリカの言い分もあるので、簡単には解決できないだろう。これらの火の粉が日本に影響する可能性は高い。

2020年のオリンピック後に日本の景気も一服するだろうと思っていたが、運営次第だが2025年の大阪万博まで景気が継続出来る可能性が出てきた。政府の積極的なコントロールを期待したい。アジアで元気なのは、日本とインドだけの様に見える。諸問題はあってもまだまだ日本は行けるはずだ。

今年一年、皆様のご検討をお祈りいたします。

 

 

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