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世相

2020年 正月

  • 2020年01月

 

 

世相日本世界感じるままに           榎本機工㈱ 社長 榎本良夫

            

「正月、お賽銭」

正月元旦、名だたる神社仏閣は初詣の人達の長蛇の列と混雑だ。外国人が見れば不思議な光景だろう。普段から信心深いのであればまだしも、年改まって新年正月になると皆こぞって初詣に出かけ一年のお願い事をする。イスラム教やヒンズー教の人達は日頃から信心深くお祈りを欠かさない。宗教心が薄れてしまった中国ではこの様な事はほとんど無くなってしまった様だ。

神社では鈴を鳴らして神様に起きてもらい、ご芳志(お賽銭)を差し上げて一年のお願い事をする。ところで、いずれ小銭の硬貨は無くなって行くのであろうが、その頃のお賽銭は、スマホからピッとやる事になるのであろうか? 大きな神社や寺ではお賽銭の集計も大仕事なので、スマホ決裁となればそれは楽になるだろう。従って御利益も大きくなるのかも知れない。時代と生活環境が大きく変化してきている。

中国では露天商も、道路脇の農産物の直売に至るまでスマホ決裁で、現金を持つ必要性が年々薄れてきている。いずれ乞食のお恵みまでスマホになるに違いない。

 

「令和大嘗祭、歴史絵巻」

新天皇の諸々の即位行事と国民の奉賀の大群、世界の人々は不思議の国日本を思わざるを得なかったはずだ。これほど国民から支持され愛されているロイヤルファミリーも世界には無いだろう(タイは少し変わりつつある)。

大嘗祭の、タイムスリップしたかのごとき歴史絵巻。本来のこれら文化の伝播元である中国でも、その文化中継地であった韓国でもこの様なセレモニーは消失してしまってから久しい。文化の流れ着いた孤島の果てで長きにわたり大事に保管してきた貴重な世界遺産である。新しい沢山の技術と並立する古い文化の保持継続、この両方が存在する不思議の国日本。新時代に向けて困難な問題は山積みだが、調和を取って発展してゆくものと期待したい。

長く不調であった新皇后もなにかはつらつとしてきた様にお見受けする。国の象徴として、新しい時代を拓いていただきたい。

 

「インド、モディ強権」

自動車販売の激減による景気の低迷に直面しているインド、需要そのものは存在しているので、いずれまた好調に戻るはずと踏んではいるのだが、黄色信号がともり始めていると感じている。イスラム教徒以外の不法移民にインド国籍を与えようという改正国籍法がインド上院で12月上旬に可決して以来、大規模なデモがインド国内で発生している。改正案は2014年末までにインドに不法入国したバングラデシュ、パキスタン、アフガニスタン3ヶ国の不法移民のイスラム教徒以外にインド国籍を与えるというもので、該当しないイスラム教徒は国外退去を命じられる可能性が高い。デモはイスラム教徒が多い東部アッサム州から始まり、2019年12月に予定されていた安倍首相のインド訪問も中止になってしまった。

先行して実施されたカシミールの自治権剥奪も、イスラム教徒が多く、隣国パキスタンとの国境紛争がしばしば起こるというこの地区特有の問題に強権を発したものだ。

デモの禁止や、通信の遮断で沈静化を図ってはいるがデモは収束する気配が無い。このまま続くと経済や外交問題にも発展し、ここ一本調子で伸びてきたインドにさらなる暗雲が立ちこめていると言える。懸念するところだ。宗教問題はデリケートで火が付くとなかなか消えない。香港のデモの様に収拾が付かなくならなければ良いが、その可能性は否定できない。

 

 

「京アニ チームワーク 日本」

インドの学生達は日本の事を良く知っていて、多くの若い人達が是非日本に行ってみたいと思っているらしいが、それは日本のアニメがもたらしているかららしい。世界トップクラスの日本のアニメがもたらす好結果である事は間違い無い。チームワークにすぐれた日本ならではの優れた沢山のアニメーションは、世界に広がっている。京都アニメーションの放火事件は残念な悲惨な事件だった。なぜあの様な事が起きてしまったのか、リスクマネージメントを考えさせられる。

 

 

「CE マーキング、中国」

CEと記されたマークが色々な機器についているが、ヨーロッパの安全基準に合致している安全製品であると証明されている、と認識すれば良いだろう。Eはヨーロッパだ。EU加盟国などヨーロッパのほとんどの国に製品を輸出するにはこのマークを付ける事が必須であり、厳格に規定された安全基準を満たすには大変な労力とお金をかける必要がある。製品その物を安全にする為のアップグレード費用である。面白い事に中国製の製品のほとんどにはCEマーキングが付けられていて、およそ安全基準など満たしていないと一目瞭然の装置にも付いているので、世間ではCEはChina Exportの略だと揶揄もされている。安全を確保する事は大事ではあるが、実際のところ同じ装置をEU以外の国に輸出する場合それほどの費用をかける必要は無く、例えばアジア諸国では同じ製品はかなり安価に入手できるという事になる。ヨーロッパでは同じ製品も非常に割高になる。これが当然ながらヨーロッパ諸国の経済競争力を削ぐ事にもなってしまっている。安い製品をヨーロッパ以外の国から入ってくる事を締めだそうという非関税障壁の一つとも見る事も出来るが、ヨーロッパ以外では安い機械を使って製品をじゃんじゃん製造しているわけなので負けても仕方が無いだろう。決して安全を冒涜しているのでは無い。自動車だって事故が起きる事の無い自動車にすべきだ。機械も作業者が絶対怪我をしない、爆発したりしない物であるべきだ、しかし経済の原則から言えば、割高な機械を使わざるを得ないのであれば、それはそれだけ競争力が無くなるのも事実なのである。

 

 

「LCCの不合理」

手荷物超過のやりとりが厄介なので仕事でLCCの飛行機に乗る事は避けているが、インドや中国のローカル路線では選択肢が無い場合があり、LCCにも乗る事もある。そもそもLCCの運営自体が、運賃は安くして手荷物の重量超過料金はしっかり頂戴するというコンセプトなので、それはそれでその様なビジネススタイルで良いと思う。しかしチェックインの際に、機内持ち込み手荷物の重量を計測し、それから預け入れ荷物の重量を1キロ単位で計測して超過料金を徴収する。もちろん重量ベースで貨客を運ぶのでそれで良いのだが、1キロ単位で追加徴収しておいて、体重30キロの人と体重100キロの人の運賃が同じである事は不公平だろう。実際、昔沖縄の離島の路線で搭乗する人の体重を測っていた記憶がある。しかしこれは飛行機に許される許容の範囲内ぎりぎりで貨物を積み込む為の計測であったはずで追加料金を求める為では無かった。

LCC航空会社も実際はそうしたいはずだが、言い出せないのであろう。人権問題がからんでくる。

 

「中国、2手」

中国では中古品を二手と呼ぶ。英語のSecond Handedと同じだ。前に所有者が使っていてこれがFirst Handed(そうは言わないが)、二番目に使う人がSecond handed でUsed CarなどとUsedも使われる。以前日本でもセコハンという呼称もあったが、Second Handedの略だ。多分戦後アメリカの進駐軍が持って来た物を置いていったときに言われたのでは無いだろうか。かく言う我が家にも進駐軍払い下げのGEのテレビを父親が買ってきて、力道山が活躍していた頃のプロレスリング中継を見ていた記憶がある。

日本では使い手の手は使わずに、物品がやや古いというニュアンスで中古と言う名称を使う。使われていない者は新古で、最近はやりのアウトレットもこの類いだ。美術的な古い物は古物。つまり日本では使ったか使わなかったか、という事象は濁して、ちょっと古い、古いが新しい、とても古い希少価値のある物、の様に優雅に呼んでいる。

 

「タイ自動車産業」

タイの自動車産業と、それを支える部品産業に停滞感が感じられる。昨年11月に開催されたタイ最大の工業見本市である、Thai Metalexでも、展示された工作機械の志向が航空機部品に置き換わりつつある。確かにタイに於ける自動車需要は頭打ち、大きな伸びしろが今後見込めない。と言ってこぞって航空機部品という訳にも行くはずも無い。すでに産業の踊り場に入っているタイの今後の舵取りは難しい。

 

「麒麟が来る」

今年のNHK大河ドラマは明智光秀が主人公だ。主題と同じ名前のビール会社には追い風になるのだろうか、とかつまらない想像をかき立てるのではあるが、かのビール会社も同じ事を考えているのかどうか。

 

 

「国際化、柔道」

物事が国際化すると引っ込めなければならない事象が発生する。柔道はかつて白い柔道着で無ければいけないというルールだったが、柔道が国際化する過程で色付きを認めざるを得なくなり、現在に至っている。日本の国技であった柔道が世界のスポーツになったのであるから世界中の意見を受け入れるのも仕方がない。

相撲は世界のスポーツにはなっていないので、相撲協会が取り決めたルールが遵守されており、モンゴルの力士もそれに従わなければならない。

それぞれの国にそれぞれのやり方と理念があるのでなかなかまとまらない問題もある。国連を見れば良く分る。

スポーツはその困難を乗り越えて正々堂々と戦う事になるのだが、その最大の競技会が平和の祭典と言われるオリンピックである。スポーツを通じて平和な世界の実現に寄与する事、そして今年は東京でオリンピックが開催される。ホスト日本は最大のおもてなしをし、大会を成功裏に収めたいものだ。

本年の貴殿のご健闘をお祈り申し上げます。

 

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