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世相

平成10年 正月

  • 1998年01月

「アジア通貨危機」
 タイをきっかけに、インドネシア、フィリピン、マレーシアとバブルの崩壊と通貨危機が発生し韓国にも飛び火してしまった。ベトナムも対ドルで現地通貨ドン安である。世界各国から高度成長が嘱望されていたアジア各国が惨憺たる有様となってしまった。これらの国々に多大な投資をしている日本にとって、この事件は対岸の火どころの生易しい話では無い。タイのトヨタは二ヶ月間の自動車の生産中止をした。進出した部品メーカーは製品を製造してもタイ国内に引き取り手が居ないので日本へ出すしか方途が無くなってしまった。消費の落ち込みから日本国内のマーケットさえ手狭な中に割って入ろうとするのだから半分喧嘩腰だ。完成車の対日輸出も各自動車メーカーで活発になってきているので、国内工場の生産に対してはマイナス要因となってくるだろう。これは自動車に限ったことではないので、各進出企業の親会社は頭の痛い事となってくるはずだ。今年の製造業は、お手上げと様子見と積極投資の三様の色分けでスタートするに違いない。
アジア諸国は日本やヨーロッパの様に成熟してしまった所では無い。かつて日本が経験した登り下りの、下りの状況だから、いずれ二、三年後にはまた浮かび上がるはずと見られるから、少しの間の辛抱で頑張ってもらいたい。
今までがあまりに一本調子で上がりすぎた。不況を知らない華僑の第二・第三世代には良い警鐘であるかも知れない。今のうちに堅実経営の素地を作っておいて貰えれば将来きっと大きな発展に繋がるはずだ。我々としても、こんな時こそ色々お手伝いが出来ればと思う昨今だ。

 

「金融破綻」
昨年は日本の金融機関の破綻がいよいよ現実化した。予想されていたので、特に驚くには値しないかも知れないが、廃業した所にお金を預けていた人は真っ青だっただろう。ただ、戦前の取り付け騒ぎの時はこれどころの騒ぎでは無かった。
金融機関に頼るのも良し悪しの時代かも知れない。銀行にお金を預けておいても利率が昨今の様では、キャッシュで持っていても大して変わらないので、安全を考えて米ドルや金に変えて箪笥預金をした方がもしかしたら安全かもしれない。ダイヤモンド等の宝石は思った程換金性が無いのが、某宝飾会社の破綻で判明した。やはり国際的流通経路があり、溶かせば元に戻る金が良いのかも知れない。

 

「銀行マン、所得」
転職した銀行マンの給与は半減するらしい。当然でないのか? 我々製造業からして見れば彼らの所得はべらぼうに高い。世間一般の会社に入れば所得が半減するのは、元々銀行の給与が常識の倍近くもあったことの証左でないのだろうか。調子の悪い金融機関の人達の報酬を早く調整してもらいたいものだ。それをしないで破綻する金融機関の穴埋めを税金でもってされるのはかなわないが、取り付け騒ぎで国が破綻するよりましなのかも知れないと諦めてしまったりもする。

 

「公務員」
公務員もどうしようもない。滅茶苦茶に働いてくれる税務署署員(脱帽!)と警察・消防などは別として、収支が赤一色の役所の一般公務員もリストラをしてもらいたいのは言うまでもない。でも、政治家が死をいとわずやらないと行政改革は推進出来ないと思うから、これもちょっと無理かな?と諦めてしまったりする。殺されたり、自決するのは民間企業人の方が多いのが皮肉と言えば皮肉か。
法人税の他国並みの削減もあきらめだろう。種籾を蒔いて育てて刈り取ればもっと沢山の収穫が得られるのに、どちらかと言うと種籾を掠め取ってしまうやり方だ。もうちょっと頭なでなでしてくれればもっと法人税を納めようかって、努力もするものを、やらずぶったくりだと嫌気がさして逃げ出したくもなる。国民の過半数が老人となる高齢化社会を迎える日本。社会保険事業も破綻に近いがどうなるのか。

 

「教育」
教育も問題だ。企業の週休二日制は、企業努力による高効率化と従業員の福祉・老齢化に適応させたものだが、どう考えても高効率化により勉強の時間を減らす事が出来るほど最近の子供が賢くなったとは思えない。学校の週休二日制には疑問がある。
若手従業員の週休二日制も問題だ。技術を研くべき年代には時間を超越してでも研鑽に励むべきで、やたら休みが多く無為に過ごす時間が多いのは疑問だ。老人と若者は区別する必要があるのではないか。仕事と、勉強・研鑽を一緒くたにするのも大きな問題だ。

 

「期待」
新年を迎えると、今年一年何か良い事が起きて欲しいという期待感で一杯になってしまう。だるまに片目を入れて願いをかけたり、神社にお参りし鈴を鳴らし、手を打って、お金を入れて、神様の気を十分に引き付けておいて、御願い事をくどいばかりにする。
今年もつつがなく暮らしたいが、製造業の場合、前進がないとそれ困難だ。前向きに進まないと運も掴み損ねてしまう。さあ、我々も一歩前進、皆様の御健闘、お祈りします。

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