モスクワ市内の多くでは横断歩道以外の道を違法に横断する人をあまり見かけない。モラルが良いと感心していたが、ところが実情出来ないのがわかった。主要幹線は片側五車線とか九車線だ。片側だけである。自動車は猛スピードで飛ばしている。日本の高速道路を横断する以上に度胸が必要なのが判った(写真8)。 御多分にもれずモスクワも車が増加し駐車場不足。ほとんどの歩道は駐車場と化し、従って車が歩道を通行し、人は車道を歩くという笑えない事実が出現している(写真9)。いずれ誰かの資金源としてパーキングメーターが出来るのであろうか。 「檄」 弊社も若い工場従業員が増えるに従って、ものづくりの神髄を伝えるのに不備が目立ち、最近次の檄を飛ばしたところだ。 作った製品は自分の娘と思い、真心を持って仕上げろ 娘は全部客先に嫁いで行く。嫁ぎ先で恥を掻かせるな。真心を持って育てろ。機械に命の息を吹き込め。 人生では、子供を育てる過程で人格がより深く形成される。人生をより深く実り豊かにする。子供を育てた経緯が無い人間に、良い機械は作れないのかも知れないが、良い仕事をするには、人間としての生活の豊かな良いバックグラウンドが必要だ。それは豊かな家庭だ。社員には皆豊かな家庭を築き、豊かな人生を送って欲しい。ただ豊かな家庭を築くには十分な金銭的裏付けが必要だ。それはあなた達自身の前向きな努力にかかっている。 真心のある製品を作れるのは、日本だけだ 徳川二百六十年間の長い豊かな孤立した時代に、日本の特質が形成確立された。その一つは心のこもった職人の技だ。この真心の技はまだ連綿として今の日本に存続している。この火を絶やしてはいけない。同じ図面で作った自動車であっても、日本の工場で作った物と、海外の工場で作った物は出来が違う。故障しない。長持ちする。中古車を多数買う海外諸国で実証されているから事実だ。紛れも無い、日本が誇れる優位性だ。心のこもった製品を作れるのは日本の技術者だけ。なお、海外の人にはそれが出来ないし期待してはいけない。 最後の組立工程が機械の善し悪しの成否を握る 流れ生産の自動車や家電では、組立て前の部品は全部完璧パーフェクトという条件だ。従って、マニュアル通りにそれぞれの部品を迷う事無く素直に組立てさえすれば良い。トルクレンチなども使用し、誰がやってもマニュアル通りに作業すれば良いし問題も発生しない事になっている。なぜなら要所要所に厳しい検査管理システムがある上に、誰が組んでも皆均一で無ければならないという手法だからだ。 弊社の単品生産システムではそれは当てはまらない。検査工程を厳密に確立させる事は難しい。機械加工をする人が正確な寸法精度と仕上りで加工し、組立てする人が組立てしながらチェックする必要がある。全部職人としての勘にゆだねられる。 嵌めたときのガタつきにより嵌め合い精度が良いかどうか感じる。 部品の表面をなでて、粗さを確かめ善し悪しを判断する。 指でさわって、カドのRやC、加工時のカエリなど無いかチェックする。 ヤスリの乗り具合で硬さの判断をする。 延長したパイプの反発具合でボルトやナットの締め具合、トルクを判断する。 運転時の音や振動、臭いや動きなどで不具合を感じる。 等、沢山あるが、これらを、音・面・動と言う。 五感を磨け!五感が唯一頼りになる様に、腕を磨けという事に収斂する。但し少なくとも十年はかかる。 何とかと、鋏は使いよう 使い手が試されているのだ。使う人がだめならどんな物・どんな人物でも役立たずになる。 使い手がよければ、ゴミも生まれ変わる。すべて使い手次第である事を肝に銘じるべきだ。 発展途上国の若者とは勝負にはならない 高度に洗練され標準化したNC工作機械と、マニュアル化された標準作業では、数字に強いインドの若い連中や、時間を問わずハングリーなベトナム、中国などの若い連中に、我々日本の若い連中がかなうはずがない。負けるに決まっている。勝てるチャンスがあるなら、先に述べた真心だ。それからマニュアル文章に書けない勘の世界にある技術。日本人が勝負に勝てるのは、これからは、職人の勘に基づく洗練された技(わざ)しかない。これは誰にも盗めない、頭と触覚と感性とみんな自分の体の中にあるのだから、絶対誰にも盗む事は出来ない。 「好況不況、イソップ物語」 アメリカの貧乏人は買い物が大好き、だけど金が無い、自動車も欲しい、家も欲しい、だけどやっぱり金が無い。そこにつけ込んで悪徳金貸しがどんどん金を貸す。なぜなら借金の証文と借金の債権が結構売れてしまい、自分には取り立て不良のリスクが無いから。債権はまた別の所に売れ、みんなで渡れば怖くないと、借金がどんどん膨れた。日本も中国もインドも、これに目をつけ、アメリカ人が欲しい物をどんどん輸出し上手い汁を吸った。 ところが無い物は無い物、あぶくでしかなかった。悪い噂が噂を呼び、金貸しも貸し渋りをはじめ、貸したお金は急遽回収、一挙に泡が消えた。アメリカという大消費市場が一挙に消えてしまい、日本も中国もインドも商売が出来なくなった。それぞれの国がどんどん悪い方へ回転を始め、輸出が減った上に国内消費も冷え込んだ。こんな所がアメリカのサブプライムローン破綻に端を発した世界不況の実情だろう。金貸しがやはり悪い!アイスランドも金貸しに踊らされた。漁師の国がそんなに一挙に高度発展する馬鹿な事があるはずがないだろう。翻って冷静に分析すれば判っていたことではある。しかし金貸しはしこたま儲けたものだ。大損もこいたが、一挙に残った投資金を回収した。その結果世界中が不景気のるつぼに叩き込まれたのである。嵐も過ぎればだが、そろそろまた次の投資先を策定し始めた。雀百まで踊りを忘れず。投資家は投資しか趣味が無いのではあるが、悪いやつらだ、、、と職人の私は思っている。 キリギリスは寒さの中、凍えて死ぬばかり。蟻は、寒さの中でも蓄えがあり、なんとか生き延びるだろう。ヨーロッパが没落し、アメリカが舞台となり、アメリカの舞台も今は水浸し。これからは間違い無くアジアの時代だ。外交下手の日本は役立たずだが、中国とかそのしたたかさだけには舌を巻く北朝鮮に、精一杯西側諸国に対し突っ張ってがんばってもらおうじゃないか。日本は脇役でのんびり余録を貰うだけでいいんじゃないか? 表に出るのが全てではないと私は思っている。氷漬けの今年前半が終わりました。後半に溶解沸騰するかしないか?貴社の御健闘をお祈りします。
「騙してもまだまだ騙せる日本人」 邱永漢著、中国ではいくらでも日本人は騙す事ができるといった本だ。だが商売ではどうも日本人の所を台湾人とした方が良いのではないかといった事例がある。 CIMT会期中、面白い情報が長く付き合っている台湾の友人から入ってきた。台湾の機械メーカーが中国で大分騙されているらしい。面白いと記したのは失礼だが、祖先が同じ者同士であるが故にそうなってしまっているのでは無いか。警戒が甘いのかも知れない。 手口の一例。機械の注文が入り、前受け金3割が振り込まれる(前払い3割、中国の工場据付時6割、試運転渡し後1割の支払い形態が台湾が販売する場合多いらしい)。勿論前受けが入るから安心して出荷する。現地工場に社員が赴き工場搬入する。なぜか都合により夕方に搬入の指示でトラックを客先工場?に入れ荷卸する。夕食を振舞われ、暗いから開梱・据付は明日との指示。翌朝その場所に行くと、梱包品が消えているというわけだ。 機械メーカーの社員が抗議すると、逆に何も受け取っていない、受取書にサインもしていない、逆にメーカーが物語りを仕組んでいるのでは無いか、すでに3割は払っているのにどうしてくれるのか、これは詐欺だという訳で公安が登場してメーカーの社員は捕まってしまう。前払いの3割を返さなければ社員は捕まったままという事になり、泣く泣くメーカーは社員を解放させる為に3割の前払い金を払い戻すといった結末。似たようなやり方で数十台やられたメーカーもあるという話だ。 「インド、脅威?」 時節柄最近テレビや新聞でのこの手の報道が多くなってきた。人口の多さはこの国の大きな可能性であるが、逆に大きな問題点でもある。人口10億以上、ざっと日本の10倍だが実際に10倍の実感がピンとこない。ところで10人子供が居たとしたら、これはなんとかやり繰りをして育てる事は可能な範囲であるだろう。ただその10倍の100人となったらこれは無理・不可能だ。10倍の人口とはこんなものではないだろうか。人口が10倍なら頭の良いやつだって10倍居る。スポーツの強いやつも10倍、美人も10倍だ。数の上ではかないっこないが、10倍を食べさせて育て、取りまとめて制御するのは至難の業といわなければならないだろう。中国も同じだが人口の多さは両刃の刃だ。反対に日本は少数精鋭のメリットを最大に発揮すべきではないだろうか。 「インドIMTEX・IETF」 1月にインド・バンガロール(ベンガルールという昔の呼び名に戻す案があるらしいが、まだ政府からの正式な許可は出ていない)で、インド最大の機械展示会が開催され、実機出品した(写真)。 出品機械はそのままデリーに移送し、2月にデリーで開催された総合見本市のIETFに出展された。IETFは10年振りに日本がパートナーカントリーとして指名され、ジェトロが指名に応じて出展者のまとめ役をした。10年前、弊社は始めてインドでのこの展示会に実機を飾って出展した懐かしい思い出がある。その頃から蒔き始めた種は、今沢山の実りとなって弊社の売上の一方を占めている。専門見本市のIMTEXに力を置いたので、IETFはその後出展していなかったが、今回は様変わりしてしまった。訪問者が非常に少ないのである。インドもこの10年で大きく変わったのだ。なんでもかんでもの総合見本市から業種毎の専門見本市に力点が置かれ、そちらに訪問者も移行したものと見られる。時代の趨勢であり仕方無いはずだ。万を期し出展した多くの日本企業は空振りにがっかりしていた。他方その1ヶ月前のIMTEXは前回のムンバイの開催から3年振り(3年ごとの開催であるが、次回から2年ごとになる)、あいかわらず引きも切らさず訪問者で昼食もままならない状態だった。展示会場はバンガロール市内から車で一時間かかる郊外に新設された。しかし開催前日には、まだメインゲートのアスファルトの敷設をしている状態で、建物も壁が出来ていない号館もありシートで覆った一時しのぎで見切り開催された。この会場が恒久的な会場になるとの事であり、完成すればインドにしてみれば素晴らしい会場となるが、交通手段が難点だ。市内から遠すぎる。雨が一度も無く毎日埃の中の進軍だったが、雨でも降ったら大変なはずだ。未完の会場も誇り?だらけで往生した。 「インド、見えない成功者」 最近面白い事に気がついた。自動車のガラスである。マルチスズキは当然日系のA社製のガラスを使用しているが、現代自動車、フォード、地元タタの車のガラスにも同A社の同じマークが入っている。渋滞で横に並ぶ車のガラスを見ていて気がついた。かなり大量の供給実績のはずと思い、聞いてみたらインド自動車生産の7割を供給していると言う。物も良いのだろうし、増加する自動車生産量に十分応じた供給をしているのだろう。どこの車が売れても自社の製品の販売につながる。普段自動車のガラスなどは注意もしないし、大きな話題のも上らない。それで良いのだろうというか、その方が良いのだろう。しかししっかり利益は上げているはずだ。商売はこんな見えない所の方が利益が出る。 「ノーベル」 今年2月にインドデリーで開催された工業関係の総合展示会IETFに出展したが、ホンダブースでは人型ロボット、アシモ君もはるばる日本から訪れ、その精緻な運動や踊りに喝采を浴びていた。何度も述べているが人間とロボットとの共存生活もそろそろ至近の事実として俎上に上がって来た感がある。老人の介護(たとえば風呂の介助)や視覚障害者の外出誘導補助などにどんどん導入されて行くであろう。いずれ精巧なループイン回路で、ロボット自身にも思考ができる様になるだろう。ただ悪用する連中もあるはずだ。映画ターミネーターの世界が現実味を帯びてくるのである。新しい技術はいつでも両刃の刃だ。 昨夏北欧を訪問して気がついたのだが、スカンジナビア諸国とフィンランドの国々の地盤は非常に強固な岩盤質である。いたる所に岩盤が露出している。土建工事は大変な事であろうと思ったが、ふとなぜノーベルがダイナマイトを開発したかが、まさにダイナマイトが爆発する様に閃光とともに判然としたものだ。土建工事の進捗を飛躍的に短縮する事の出来るダイナマイトの発明でノーベルは巨万の富を築いたのであるが、他方それが戦争で人々を殺傷する事にも使われる結果となり、新技術の平和利用促進の為にノーベル賞が創設されるのである。悪事千里を走ると言うが、犯罪との戦いはいつも鼬ごっこであり、新技術がそれに輪をかける。だからと言って新技術にストップをかける事は本末転倒である。 原子力発電所の新規着工が世界的に最近増加している。西欧を中心に多くの国でその危険性を指摘するあまり原子力発電所の新規建設が凍結されていたのであるが、中国やインド等の巨大国家の石油消費の劇的増加にともなうこの石油狂乱の中、ついには背に腹を変えられなくなったのであろう。技術の進歩の途中には色々な失敗が伴うがそれに負けたらすべてそれで終ってしまう。あきらめの悪い日本人だからこそ日本の工業技術は向上した。この諦めの悪さを失いたくない。 「硫黄島からの手紙」 これはアメリカ製の映画であるが、登場人物はほとんどが日本人でほとんど字幕が必要無い。赤紙1枚で否応なく徴兵された一庶民と、アメリカの滞在期間が長く、人道的な硫黄島守備隊の長が主人公である。ロスアンゼルスオリンピックの馬術競技で金メダルに輝いた西竹一中佐(硫黄島で戦死)も色を添えている。史実をほぼ忠実になぞりながら、戦争の悲惨とともに、日本軍隊の鉄拳による内部統制の非情さをも描いている。 玉砕自決の場面が多数出るが、一切の例外なく最後に「天皇陛下万歳」が叫ばれるのである。「靖国でまた会おう」と言って不本意にも散っていった兵士達は靖国神社に祭られるのであるが、現在、万歳の対象であった天皇陛下は靖国神社には参拝されない。政治に利用されない立場をとっておられる天皇陛下故に一切の発言は無いが、陛下が安んじて、散っていった兵卒の御霊をお参りできる様にするのが、今問題となっている「靖国問題」の最短の解決方法であるはずだ。今年も、8月15日が近づいてきた。すでに今年も半分を折り返しており、貴社の変わらぬご健闘を祈念いたします。